F1マシンを運転したハナシ
じつは白状すると、
不肖ぴーよし58歳、
かつてF1マシンを運転した事があります。
と言っても、ハンドル握って後ろから人に押してもらっただけですが(笑)。
でもそれは結構インパクトのある経験で、ぴーの車や機械に対する考え方が変わりました。
想い出話ですがご紹介したいと思います。
ところでF1レースってわかりますよネ?
自動車レースの最高峰のヤツです。時速300km以上で走るアレです。
なのでF1マシンに乗れるのは、世界でもトップクラスのレーサーだけです。
例えば、アイルトンセナとか、プロストとか、シューマッハとか、中嶋悟とか、、、←古すぎるか?
ところが30年程前(1990年前後)、ぴーはあるF1マシンの運転席に座り、ハンドル握って数十メートルほどですが動かした事があるのです。
マシンはレイトンハウス。
ミントブルーのチームカラーが印象的だったマシンです。
ぴーが仕事していたイベント、ステージの世界では、
当時日本がF1ブームだったこともあり、F1マシンをイベントで展示することが時々ありました。
F1マシンを展示すると多くの人にイベントに来てもらえたからです。
F1チーム側も、シーズン終了後のマシンを展示用に貸し出すことで収入が得られるので好都合だったのです。
なので、ぴーがある時関わったそのイベントでもF1マシンが展示されていました。
ところがイベントが終わって搬出の段になって問題は起きました。
F1マシンを引き取りに来たのは、運送トラックとその運転手一人だけだったのです。
運転手が言うには、
「オレ様は運転が仕事だから、積込みはソッチでやってくれ」
えっ?そんなの聞いてないけど???
でもこわもて風の運転手様には逆らえなくて(笑)、仕方なく自分たちで積み込む事になりました。
とは言っても、マシンが展示されている場所からトラックのいる搬出口までは、数十m離れています。
途中には、搬出中の他の資機材がいろいろ置かれています。
つまり誰かがマシンの運転席に座ってハンドル握って、他のスタッフがマシンの後ろを押して(さすがにエンジンは掛からない)、資機材の間を縫ってトラックまで動かさなければならないのです。
誰が乗る?
展示用とはいえ、ついこの前までサーキットを疾走していたモノホンのマシンです。
たぶん億の値段です。フェラーリよりは余裕で高いです。
資機材にこすったり、ぶつけたりでもしたらヤバイです。誰も乗りたくありません。
お互い顔を見回し合うスタッフ、、、しょうが無いので、現場の責任者だったぴーが乗る事になりました。
運転席には、ハンドルを外さなくても座れました。
ところがシートに座って、ハンドル握って軽く左右に動かした瞬間感じたのです。
このハンドリング、素晴らしい!
ぴーは別にレースやってたわけでも、走り屋でもありません。ただの町人です・笑。
でも一瞬で解ったのです。その違いを。なにしろモノスゴく良かったから。ゼンゼン違ったから。
どう違ったかというと、ハンドルを据え切りすると、タイヤが地面に触れている部分の感触が、ハンドル握る手にとてもリアルに伝わってくるのです。
それはまるで自分の手のひらで直接地面に触れているかのようです。
例えると、自分の手の平の神経が、ハンドルからステアリングのリンケージの中を伸びて、タイヤの表面まで届いているような感じです。そのくらい感じ取れるのです。
その感触は、後ろを押してもらって動いているときも同じでした。
歩くスピードより遅いのですが、走る場所がコンパネ板やパンチカーペット、さらにコンクリへと変わる度に、それぞれの感触の違いがホントに地面に手で触れているかのようにリアルに伝わってきます。
さらに床に貼ったガムテープの上を走ったり、小さなゴミ一つ踏んだのも解ります。
つまり路面の状況、タイヤのグリップ感が、文字通り手に取るように解るのです。こんな車は初めてです。
もう一つ気付いたのは、
タイヤが見えるので運転しやすい。
どう言うことかというと、F1マシンのタイヤって、4つともむき出しですよね。普通の車のようにタイヤハウスに隠れていないですよね。
なのでF1マシンの運転席からは、前輪二つが常に視界に入るわけですが、そうするとハンドル切った時に、タイヤがどのくらい曲がったか、車がこの先どの方向へ進むのかが一目でわかるのです。
感覚に加えて目でタイヤの向きを確認できると、とても運転しやすいのです。
だから資機材の間を縫って走るのも、初めてのF1マシンでもゼンゼン不安を感じません。こすったりしないかという不安もすぐに消えました。
これまでハンドル切ってどのくらい曲がるかは、感覚、慣れ、当てずっぽうでやっていたのだと言う事に気付かされました。
気が付くと、マシンの運転を楽しんでいました。
それはほんの4、5分のことでしたが、今も鮮明に覚えている素晴らしい体験でした。
で、その体験を通じてわかったのは、
このハンドリングだから、スピンギリギリの速度でコーナリングしたり、タイヤをロックさせずにフルブレーキングしたり、ドリフトだってできるんだなあと言う事です。
つまり、
300キロで走るための車は、300キロで走れるように作ってある。
と言う事です。
F1が時速300キロで走れるのは、もちろんドライバーのテクニックによるところもあるでしょうが、決してドライバー頼りだけで走っているわけではないのです。マシン自体が300キロで走れるように作ってあるのです。
300キロで走るために必要な情報が、ハンドルを通じてドライバーに伝わるように作られていて、300キロで走るためのステアリング操作が的確に行えるように作ってあるのです。
「だから300キロで走れるのか、、」と知った瞬間でした。
そしてこれは後日気付いたのですが、
それは、同じことが他の機械や道具についても言えるのだと言う事です。
例えば、ホームラン王のバットはホームランが打てるように作ってあるし、いい音が出る楽器はいい音が出るように作られている、いい写真が撮れるカメラはよく見えるファインダーやシャッターチャンスを逃さない切れのいいシャッターを持っている、真っ直ぐ切れるノコギリは真っ直ぐ切るためのいい歯が付いているのです。
だから、そうでないノコでいくらがんばっても、真っ直ぐには切れないのです。
道具の出来って重要なんだなあと、思うようになりました。
かつて自動車評論家の徳大寺有恒氏が、
「たとえ時速40キロで走ってもポルシェはポルシェ」と言っていたかと思うのですが、
「押してもらっても、F1はF1」
これは確かです。そのくらいスゴかったです。
あれから30数年、あれよりいい車には未だ出会ったことはありません。
ぴーぱー夫婦の だんなのぴー:車担当。
四駆、旅、登山、星、温泉、お遍路、DIY、野菜づくり、マグロ好きの50代。別名マグロよしのり。2020年3月退職。
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